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2007年8月24日 (金)

スペイン語映画紹介:「アモーレス・ペロス」

Cine1  今回紹介する映画はメキシコ映画の傑作「アモーレス・ペロス」です。ちなみに、1999年制作のこの映画、カンヌ国際映画祭グランプリ受賞他、世界中で様々な賞を受けていて、2000年東京国際映画祭でもグランプリ&監督賞を受賞しています。スペイン語学科生必見映画の一つです。

 この映画の本質をよく理解している解説を見つけたので、ご紹介します。

報われない愛にもがく人間模様を激しくも哀しく描いたラテン映画の名作が登場!

 一台の車が暴走している。どうやら後方車に追われているようだ。しかも追っ手は拳銃を持っている。逃げる二人の若者は、必死に追ってくる車をふりきる。しかし、うまくかわしたと思った瞬間、彼らは交差点でもう一台の車に激突しまう・・・。ダウンタウンに住むオクタビオは兄ラミロの妻スサナに恋心を抱いている。ラミロは表向きはスーパーのレジ係だが、裏では仲間と強盗を重ね、その金を家には入れずに遊んでいる。暴力的でスサナにもつらくあたる兄から彼女を救い、街から逃げ出すことがオクタビオの夢だったが・・・。

汗や血の匂いが漂うかのようなリアルな映像は迫力満点

    

 人が映画を観る動機とは何だろうか? いきなり話がデカくなってしまったが、おそらく「スカっとしたい」「大笑いしたい」「ハラハラしたい」といった、いわゆる“感動”を得たいという理由が一番だろう。しかし、映画を観ることには“映画でしか知ることのできない人生”に出会うためといった側面も大きい。『アモーレス・ペロス』はメキシコの様々な階級に属する人々の生活をリアルにえぐったオムニバス形式の作品である。冒頭、拳銃を持った謎の男たちに追われる主人公らしき男とその相棒が派手なカーチェイスをやらかしている。車の後部座席には血を流して倒れている犬。この男達はなぜ追われているのか?犬は何故血を流しているのか?観客はこの導入部分でグっと本作に引きづりこまれる。そして追われる男達の車は交差点に突っ込みクラッシュ。映画はここで時間を戻し、事故を起こした男、事故に巻き込まれた美しいモデル、事故を目撃し、傷ついた犬を連れ去る元ゲリラの殺し屋と、1つの事故に交差する様々な人間の生き様を浮き彫りにしていく。兄嫁に横恋慕し、彼女と街を出るため飼犬を闘犬にして金を荒稼ぎする青年を描く『オクタビオとスサナ』、不倫の末、ようやく愛を勝ち取ったはずの人気モデルが事故のために転落していく『ダニエルとバレリア』、元ゲリラの殺し屋が、革命のために捨て去ったはずの家族への愛に苦しむ『エル・チーボとマル』。

 この映画で描かれている“愛”はすべてエゴイスティックであり、報われない不毛の愛だ。そして上流階級を描いた第2話以外は暴力と血にあふれている。独立戦争やゲリラ革命など、暴力とメキシコは切っても切れないようなところがあるが、やはり第一話で描かれるような下層階級のメキシコが一番生臭く、印象的だ。しかし、どの登場人物たちも熱い血を漲らせながら、一様に憂いを帯びており、映画全体を包む空気も熱気と感傷で溢れている。ここにはアメリカ人が逃亡を夢見る陽気なメキシコの姿はなく、むしろガルシア・マルケスの小説のような圧倒的な世界観があり、観る者の心を掴んで放さない。これは脚本の良さはもちろんだが、手持ちカメラを使用した、ドキュメンタリー映画を見せられているかのような錯覚を起こすカメラワークの素晴らしさによるところが大きいだろう。メキシコという国に本当の意味で触れる機会の少ない私たちにとって、本作は、実際はどうにせよ“リアルなメキシコ”を垣間見せてくれるのだ。また、メキシコ人俳優達が素晴らしい。彼らのただでさえ濃い顔のアップの多用や汗臭さが匂ってきそうな暴力シーンは迫力満点だし、感情表現のこれまた激しいこと。ほとんどが日本で無名の役者だが、思わず唸ってしまうぐらいの名演技を披露しており、世界の広さ、人口の層の厚さといったものを実感させられる。特にエル・チーボ役のエミリオ・エチェバリアがいい。イギリス人だったらサーの称号とかもらえそうな鬼気迫る演技を披露してくれた。ギリシア悲劇でもシェイクスピアでもいいんだけど、“三大悲劇”とかがハマりそうな人だ。

         観る者の心にいつまでも残る、映画の中の犬たちに象徴される痛ましい人間の姿

    

タイトルの『アモレース・ペロス』は直訳すると「犬のような愛」。この映画には犬がたくさん登場するが、主人公達が飼っている犬は、それぞれ自身を暗示している。生きるために闘犬となり、そのうち倒す必要もない相手まで噛み殺してしまう犬は、愛のために狂気に走るオクタビオを。室内犬として可愛がられていたが、床下に閉じ込められてしまう犬は事故によって部屋に閉じ込められたバレリアを。たくさんの捨て犬たちは世捨て人のエル・チーボのそれと重なる。一見住む世界の違うそれぞれの登場人物だが、実は犬のような哀れな存在であり、愛=エゴという呪縛に苦しんでいるという意味では同一なのである。それぞれの登場人物が辿る運命は過酷だが、まるでテオ・アンゲロプロスの映画を観ているような重厚な気分にさせられるエル・チーボの物語のラストシーンにあなたは何を感じるだろうか?

http://www.watch.impress.co.jp/movie/column2/2001/12/03/より

レンタルビデオ店で入手できます。興味のある方はぜひご覧ください。

[瓜谷]

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